◆誰よりも◆

 

翡翠は知っている。

頼忠が務める北の武士団は院の権威の象徴であり私的軍事集団ということを。

もともと武士とは武芸に秀でた家柄で、芸というからには馬術や教養も必要である。

今では貴族の護衛や争い事に利用されているが院の北面の武士団に限っては格別な地位にある。

何事に於いてもまず院の声ひとつでそこの武士たちは公私問わず従う義務があった。

二人といない美貌の頼忠は院の寵愛はさらに深く、昼夜に関わりなく務めなければならい。

だがそれは翡翠がけして言わない大きな不満でもあった。

 

もちろんそれに気づかぬ頼忠ではない。翡翠にすまない気持ちで胸が痛い。

たとえ務めでもそれを口にすれば弁解となり、翡翠に院との関係を公認させることになってしまう。

”公認”と、知られてはいるがその代わりそれ以上のものを捧げるのとでは違うと頼忠は思う。


 


 

誰よりも




その夜、翡翠は頼忠の「男」を口に含むと舌で転がしたり襞の間をまさぐった。

掴んでいる張り詰めたその塊は皮膚が伸びて薄くなり見事な色に艶がある。

猛り懇願する頼忠の男。

手で根元をさすると後ろの袋をもみ、再び長く突き出た塊へと撫で上げる。

翡翠の唇が先端を絞る。

口の中では強く吸い上げたり軽く転がして、嫌がおうでも頼忠は恍惚の中心へと誘われた。

頼忠は翡翠の優しさと強さの愛撫を全身で受け止めている。

触られているのは一部分なのに、そこから伝わるものが他の誰からも得られなかった感覚に頼忠は

突き落とされる。

 

翡翠は、この世で私以上に頼忠を愛している者などいないよと愛撫する。

頼忠は、あなた以外にこの心までも奪っていく人はいないと震える。

互いにその全身を込めて精神までも愛し貫く。

それが何よりも絆を深くしていくのだった。

 

「あ、・・・んっ。ひ、すい!」

「いいよ。さあ、出しておしまい」

口で一気に激しく吸い上げ、手で頼忠をこすり上げる。

意識と恍惚の境を彷徨う頼忠の美しい顔が男にして天女の表情になる瞬間。

最も愛する男の名を呼び翡翠の咽の奥で達成した。

 

翡翠は放出された頼忠の体液を、頼忠が自分の愛撫に応えた悦びの結晶であり一滴でも愛おしい。

ただの行為の結果ではなく、愛する男の身体から湧き出たもの、それが咽の奥に注がれる感触に執着する。

>稀なる美しい男の相手として、普通の器量では色香に誘われて寄り付く男と変わりはしない。

百人の男たちの一番ではなく、たった一人の男でなくてはならない。

それが出来る、いやそのままなのが翡翠である。

それを一番よく知っているのが頼忠その者であった。

 

一人では生きられぬ世の中。

男同士であれば束縛が出来ないことを承知の二人。

それだけに肌を重ねる時は何もかもを洗い落とすように愛し合うのだった。

 

 

なんのことはない。

結局は欲望のままむさぼりあっているだけなのですよ。

どのような理屈をこねようが愛しているの一言で全てが好しということです。

それにしてもこのタイトルが貧弱だな。